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2014年4月12日 (土)

東京のソバ屋はもちろん昼酒を飲める町のオアシスだけど、ぼくがたまに行く御徒町ガード下の「味の笛」って立ち飲み店じゃ、午後3時の開店と同時に満員になる。

この頃、若い人と話してみると、杉浦日向子を知らない人が多いのに驚く。
NHKテレビの「お江戸でござる」に出演していた印象が強いが、それも10年以上前のこと。

亡くなって早くも9年になる。
日向子さんも少しずつ、人々の記憶から消えて、忘れられた存在になってゆくのかなぁ。
アマゾンで調べたら、『もっとソバ屋で憩う』が品切れで、新刊本で買えないことがわかった。
あれほどの名著が、品切れとは、本当に悲しい。

この本はまず「まえがき」冒頭の一言に心を打たれる。

グルメ本ではありません。おとなの憩いを提案する本です。

自殺者や鬱病患者を蹴散らしながら、どこまでも続く経済成長至上主義の世の中で、
「おとなの憩い」っていう言葉が、近年ますます、重く響く。
こんな一節に、心がすっと、軽くなる。

昼と夕の間に、並木(藪蕎麦)で、焼き海苔を、蚕のようにはじからみみっちく食みつつ、徳利の冷やを、ちびちびやる。外はまだ明るい。ほの暗い店内では、おとなたちが、てんでに手酌で、つかのまのバカンスを紡いでいる。年を重ねるのも悪くはない。人生まんざら捨てたもんじゃない。ドンマイ、大丈夫。

こんな文章を読んだら、急に平賀源内の「放屁論」が読みたくなって、再読。
中央公論社の「日本の名著」シリーズに、まぎれ込んでいるから、マジメな論文のフリをしているけど、両国橋の西にある広小路の辺りでオナラを芸にしていたへっぴり男の話。
「かいけつゾロリ」の子分のイシシやノシシの特技オナラ攻撃と、同レベルのくだらねえ話だよ。

侍が威張って、切り捨て御免なんて言われた江戸なんて、実はそんなもんだろう。
そういや、日向子さんの『江戸へようこそ』の表紙が司馬江漢の両国橋の絵だった。


人の気配の少ない土浦を歩いていたら、昼酒を呑んで、酔っ払って歩きたくなった。

ここでは歩道を疾走する恐ろしい自転車に、出会うこともなく、のんびりと町を歩くことが出来るから、気持ちいいのだ。

駅は近いし、公共交通機関が発達してるし。

それなのに、どうして、こうもマジメな人だらけなんだろう?

せっかく、勇気を出して桜町の歓楽街を歩いたのに、人がいない。

昼間に東京の吉原を歩くと、人相の悪いのが、いまいましげにこっちを見ているのに。

そんな輩すらいない。

だいいち、開いている飲み屋がない。

東京のソバ屋はもちろん昼酒を飲める町のオアシスだけど、ぼくがたまに行く御徒町ガード下の「味の笛」って立ち飲み店じゃ、午後3時の開店と同時に満員になる。

生き馬の目を抜くような忙しない大都会東京だって、こんなにリラックス出来る場所があるのに。

江戸は吞兵衛の楽園だった。

子供まで含めて、江戸の人口の半分を下戸とすると、酒の消費量はひとりあたり一日二合強だという。

もっと、もっと、もっと。

ぼくたちは暮らしの中に、職場と家庭以外に、等身大の自分に帰れる憩いの時間と場所を持ちたい。

日向子さんが、生涯かけて、様々な方法で表現しようとしたのはそういうことだ。

だから今夜は、日向子さんの葬式で流れたベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章を墓前に捧げて、これから彼女の志を受け継ぐ決意表明としよう。

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コメント

「お江戸でござる」はよく見ていました。
伊東四朗たちの劇も悪くはありませんでしたが、後半の日向ちゃん(我が家での呼び方)の解説が目当てでした。
でも、本は一つも読んだ事がありません。
こんなに早くいなくなってしまうなんて思ってもいませんでした。

日向子さんの本でベスト3を選ぶなら、『もっとソバ屋で憩う』『うつくしく、やさしく、おろかなり』『杉浦日向子の食・道・楽』ですかね。それぞれ、そば、江戸、酒という彼女のこだわりポイントの代表作。若い頃の作品に比べて、死を意識しながら書いているから文章の切れ味が増していて、激しく心を打たれます。

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