山口昌男のお陰です。
デンゾーさんのコメントに返事を書いていたら、なんだか山口昌男のことを思い出してしまった。
ちょっと必要に迫られて、今週は杉浦日向子の『合葬』
そしてさっきまで山口昌男の『敗者の精神史』を読んでいた。
どちらも、いわゆる明治維新の負け組を描く。
内村鑑三のようなクリスチャンが負け組だったことは、若い頃から知っていた。
けれども、もっと大きな知の地下水脈があったこと。
そして、どうもこの本に登場する人々に、自分が無性に惹かれることを知った。
自分のアイデンティティのありかを見つけた思いがした。
維新の元勲なんて呼ばれている連中が安っぽく見え、永井荷風や内村鑑三に惹かれる理由がわかった。
それもこれも、みーんな山口昌男の、1995年に発表されたこの本のお陰。
「内田魯庵山脈」「挫折の昭和史」「敗者学のすすめ」といった関連書も全部いい。
山口昌男は脳梗塞で倒れてから、健康がすぐれず、最近は新著も出ていないけれど、
いままでの仕事で十分、日本の知識人をあっと驚かすような仕事をしてきた。
協調会にいた田沢義鋪のことを調べるためにページを開いたら、八王子における大正デモクラシー文化の中心人物だった松井翠次郎や菱山栄一の活動に目が移り、かれらを好きになってしまった。
自分が今考えているようなことは、とっくに大正時代の先輩たちがやっているんだ。
菱山が売文社の堺利彦(黒岩比佐子『パンとペン』の主人公、モリスの「ユートピアだより」を訳したことでも知られる)に仕事を頼むと、仲間の白柳秀湖も登場する。
白柳秀湖は野田争議でも登場してくる作家、評論家である。
山口昌男のことを書いているのに、いつの間にか「野田争議」につながってしまった。
それくらい「野田争議」は、その後の日本の歴史を暗示し、1920年代の終焉を告げる一大ページェントだったと思う。
もうしばらく、いやずっと、「野田争議」の仕事がつづくんだろうなあ。
« 豊かなローカル・マーケット・エリアを取り戻すために | トップページ | 映画「フラガール」とイヴァン・イリイチ »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- ならいっそ、一芸に秀でることは諦めよう。「道楽三昧」を旗印に掲げて、素人の強みで好きなことなら何でも手を染めちゃおう。(2025.01.28)
- 我ながらつまんないこと書いてるなあ。(2025.01.14)
- ぼくは好きなことしかやらないので、公私混合でいつも遊んでいる感じです。(2024.05.12)
- 2つの大きな出会い(2024.04.09)
- ぼくのPERFECT DAYS(2024.02.26)
« 豊かなローカル・マーケット・エリアを取り戻すために | トップページ | 映画「フラガール」とイヴァン・イリイチ »
コメント