重荷をおろして自由になるんだ。
今度映画になった川本三郎「マイ・バック・ページ」のあとがきを再読していたら、こんな文章が目にとまった。
ただこうも思う。たとえば私はザ・バンドの歌う「ザ・ウェイト」という曲がとても好きだ。とくに「重荷をおろして自由になるんだ、君の重荷は私にまかせるんだ」というリフレインが。その言葉を繰り返し続けていたらいつか重荷がなくなるのではないかと思ったりする。そのときは「私」ではなく「僕」を主語にして軽やかな文章が書けるのではないか。「苦悩のひびきがいかに美しいものであろうと、ふたたびそれを聞こうと望んではならないのだ。苦悩を癒やそうとすることのほうがより人間にふさわしい」というシモーヌ・ヴェイユの言葉を借りれば、私も「苦悩を癒やし」たいのだ。
名著『荷風と東京』を始めとする川本さんの著作の愛読者なので、一人称の書き方にこだわる作家だということは知っていたけど、こんなところにその原点があったことは、以前読んだときは気づかなかった。
川本さんの本当の苦悩は、「マイ・バック・ページ」の本を読んでも、映画を観ても、僕のような極楽とんぼには理解できるはずもないけれど、僕も「ザ・ウェイト」が好き。
確か少年の頃みた映画「イージーライダー」でも挿入歌として使われていて、町を歩いていても、車を運転していても、暗い、重苦しい空気を払い退けたい時に、心の中であのイントロが鳴り始める。
リチャードが亡くなった直後に日本公演でザ・バンドを見たことがある。
長年憧れていたバンドを生でみたという感激はあったけど、ロビーとリチャードのいないザ・バンドは、すでに違うバンドだった。
1968年という時代の空気を包み込んだテンションの高いファーストアルバム「ミュージック・フロム・ビッグピンク」に収められたバージョンがいい。
1968年から69年。少年期だった僕の人生も転換期を迎えていた。
その時、背負ってしまった重荷が、今も自分を苦しめているなあって、思う時もある。
だから、今日はザ・バンド。
デニス・ホッパーやピーター・フォンダのように、僕も、わずかな数の仲間と、ひっそりと、小さな旅に出よう。
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