恐るべし。エバレット・ブラウン
最近読んだ本で面白かったのが、パルコ出版から出た松岡正剛、エバレット・ブラウン『日本力』。
パルコ出版なんて、とっくになくなったと思っていたのに、意外な好著を出版してくれてうれしい。
(ちなみに西武セゾン系のリブロポートという出版社は、いい本を作っていたけど、とっくに消えた。)
それはともかく、松岡正剛は対話で実力を発揮する人だということが、よくわかった。前に読んだ『多読術』もよかった。
単著だと、あまりの博識ぶりに書く力が追いつかず、話が飛びすぎて、僕の知力ではついていけないから、どうも読後感がすっきりしない。
その点、対話だと、相手のレベルを推し量りながら論理が展開してゆくので、ちょうどいい案配のスピード感で、話がすすむから心地いい。
特にこの本は、相手役のエバレット・ブラウンというアメリカ人の写真家がいい。
日本語でこれだけ深い内容の対談本をつくれるなんて、驚異的だよ。
外国人から、日本を教わったような気がする。
例えばこんな具合に。
「ぼくが日本の豊かで深い文化や遊び、禅や神道といったものが好きなのは、そこで『自分が消えてゆく』という体験ができるからです。自我というものが消えて、自然と一体になり、人と一緒になる。自分自身が溶けていく文化とでもいえるでしょうか」
「大学生の頃、ぼくは芸術家になりたいと思っていました。けれども、しばらくしてから、どうも違うということに気がつきました。ものをつくるというのは『自己』や『自我』という考え方から生まれた発想です。そうではなく、『生活そのものが芸術になる』のが一番いい。かつての日本-江戸時代や明治の初期の日本では、生活そのものが芸術でした。ぼくは松岡さんの世界に、生活そのものが芸術だった頃の日本を感じます」
これって、永井荷風が生涯かけて伝えようとしたことである。
恐るべし、エバレット・ブラウン。
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http://www.jps.gr.jp/110223.pdf
エバレット.ブラウンさんのセミナーのお知らせです。2月23日です。
投稿: | 2011年2月17日 (木) 14時25分
どなたか存じ上げませんが、ご丁寧に連絡をありがとうございます。
よろしければ次回から、お名前をいただければ嬉しく思います。
投稿: 逆流亭 | 2011年2月19日 (土) 22時00分