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2009年12月31日 (木)

今年の三冊

今日は樋口一葉風に言えば「大つごもり」。

この一年を振り返ってみる。

まず、今年読んだ小説で一番感銘をうけたのは、いまさらの感が強いが、森鴎外「雁」だろう。

拙ブログ

とうとう森鴎外が来た

参照

昨日、湯島に行ったので、岡田とお玉がすれ違う無縁坂の写真を撮ってきた。左手が岩崎邸である。

「雁」の中からちょっと長いが、この界隈を説明している部分を引用する。テキストは青空文庫から借用した。

「そのころから無縁坂の南側は岩崎の邸(やしき)であったが、まだ今のような巍々(ぎぎ)たる土塀で囲ってはなかった。きたない石垣が築いてあって、苔(こけ)蒸(む)した石と石との間から、歯朶(しだ)や杉菜が覗いていた。あの石垣の上あたりは平地だか、それとも小山のようにでもなっているか、岩崎の邸の中に這入って見たことのない僕は、今でも知らないが、とにかく当時は石垣の上の所に、雑木が生えたい程生えて、育ちたい程育っているのが、往来から根まで見えていて、その根に茂っている草もめったに苅(か)られることがなかった。

 坂の北側はけちな家が軒を並べていて、一番体裁の好(い)いのが、板塀を繞(めぐ)らした、小さいしもた屋、その外(ほか)は手職をする男なんぞの住いであった。(中略)その隣に一軒格子戸を綺麗(きれい)に拭き入れて、上がり口の叩きに、御影石(みかげいし)を塗り込んだ上へ、折々夕方に通って見ると、打水のしてある家があった。寒い時は障子が締めてある。暑い時は竹簾(たけすだれ)が卸してある。そして為立物師(したてものし)の家の賑やかな為めに、この家はいつも際立ってひっそりしているように思われた。」

最後に出てくるひっそりした家がヒロインのお玉が囲われている家である。この後、不忍池を撮影したが日が暮れてしまい、私のカメラの性能では、燃えるように黄色いアシの色が写せなかった。残念。

今思うと、大学生の頃この坂の隣でバイトしていた私は、当時付き合っていた女性とこの坂を上ったことがあるような気がする。

坂から不忍池を見るたびに過ぎ去った二十歳の頃を思い出す。

岡田とお玉の物語が自分の青春時代に重なってしまう。切ない。

文芸評論では持田叙子『荷風へようこそ』慶応義塾大学出版会だろう。

拙ブログ

「沖縄病のなおし方」だっていろいろある

参照

サントリー学芸賞を受賞したこの傑作評論集は、朝日新聞の書評欄でも平松洋子が今年の三冊に選んでいる。

そして、出口の見えない時代に入り込んでしまったような日本に、一筋の光明をもたらしてくれるような本が田中優子『未来のための江戸学』小学館101新書である。

田中優子って、テレビで見ると緊張する人みたいで、杉浦日向子とちがって、しゃべりはいまいちだが、文章は抜群に上手い人だと思う。

自分にとってベストワンは『江戸を歩く』だが、この本にもしびれるようなフレーズがいくつも出てくる。

「土から際限なく搾取するのではなく、土に与えることで持続可能な未来を考える江戸学である。その意味で、ここでいう江戸学は、未来学であると同時に、平和学でもある。」

今年は秋頃から「提灯」のことを勉強しているうちに、どんどん江戸時代に引きづり込まれていった。

若い頃熱中した大塚史学というイギリス経済史の本の中にもイギリスの農村で出現した職人によるものづくりの世界が美しく描かれていた。

モリスが愛した産業革命前の職人によるものづくりの世界である。

田中優子は江戸時代の農村をこのように描く。

「外国に安いものや技術の高いものを求めて購入するのではなく、足もとの土の中に可能性を探ったのである。そして自らの持つものを人の技術力でさらに磨き上げる、という社会を作り上げていった。」

それらの産物は柳宗悦『手仕事の日本』でたっぷりと紹介されている。

この前吉祥寺の本屋にいったら、岩波文庫で改訂版『手仕事の日本』が出ていた。この本も文章が平易で柳宗悦入門には最適な本である。

余談はさておき、モリスと橋本左内の思想の共通点まで紹介しているこの本は740円という値段以上の価値がある。

もしよかったら、どうぞ。

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