ならいっそ、一芸に秀でることは諦めよう。「道楽三昧」を旗印に掲げて、素人の強みで好きなことなら何でも手を染めちゃおう。
小学生時代に同級生(高名な漫画家の息子)の影響で映画にはまり、中学生になってロックを聞き始め、高校の途中でライ・クーダーの『パラダイス・アンド・ランチ』と細野晴臣の『トロピカル・ダンディ』というアルバムに出会って、ロックを卒業した。
中学、高校と勉強は苦手で、部活もダメで、友だちも少なくて、目立たない少年だったけど、ただ「変な音楽を聴いてる奴」としてクラスでは認識されていたらしい。
それから、数十年たって、自分の興味のおもむくまま、音楽、映画、大衆芸能の様々なジャンルに手を出してきた。
ぼくは本当に取り柄のない人間で、自分の周りにいる、この道一筋の研究者や小説家や工芸家や職人に憧れ続けてきたのだが、とうとう何一つ上達せず、自己肯定感を持てないまま歳を取ってしまった。
自分の周囲を見渡しても、皆さんの優秀さにため息をつくばかり、劣等感に支配されて空を見上げる日々を過ごす毎日。
そこで、新しい年を迎えて、心機一転。自分なりに決断した。
ならいっそ、一芸に秀でることは諦めよう。
「道楽三昧」を旗印に掲げて、素人の強みで好きなことなら何でも手を染めちゃおう。
それが、自分らしい生き方ということかもしれない。って、遅まきながら気がついた。
取り急ぎ、私設図書館に17番目の新ジャンル「地球は凸凹だから面白い。隠れ家としての音楽・映画・大衆芸能」を作った。
文言は高校時代に大好きだった雑誌「ニューミュージックマガジン」の創設者中村とうようさんの本のタイトルを参考にした。
こうして、今まで自宅に置き場がなかったジャンルの本たちが、生き生きと語り始めた。
すると、不思議なことに、今日は久しぶりにお客さんが二組、立て続けに来館された。
ホントに不思議だ。
今日のBGMは『トロピカル・ダンディー』から「絹街道」。この曲を聴いている間だけ、冴えない日常を忘れられた記憶がある。
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